2025年5月20日、欧州化学品庁(ECHA)は、新たな化学物質データベースECHA CHEMにおいて、再設計された分類および表示一覧(C&L Inventory)を追加したと発表しました。

データのアップグレード
分類および表示一覧(C&L Inventory)は、約35万種類の物質に関するデータを収録しており、その中にはEUレベルで調和された4,400件以上の統一分類、およびEUREACH登録で通知または含まれる700万件の分類が含まれています。
ユーザーフレンドリー
今回のC&L Inventoryのアップグレードは、ECHAが化学データ統合データベースを構築する上での重要なマイルストーンとなっており、2024年1月にECHA CHEMプラットフォームが初公開されて以来、既存データ体系への大規模な統合となります。
これまでにデータベースには、企業から提出された10万件以上のREACH登録情報が集まっており、今回のアップグレードでは、機能の再構築を通じて以下の3点が最適化されました:
ユーザーインターフェースの操作性を強化し、分類情報の検索プロセスを簡素化しました。
EUの現行および予定されている強制分類の明確性を向上させました。
データの構造化を通じて、企業がコンプライアンスと安全対策を正確に実施できるよう支援します。
今後の計画
ECHAはEUで最大規模の化学物質データベースを運用しており、その主要な役割の一つは、業界が提出する申請データと規制当局の活動により生成される情報資源を統合することです。
ECHA CHEMは、ECHAが一般公開向けに提供する情報共有のハブとして、化学品に関する監督・管理を取り込み、REACH等の法令に基づく規制判断を公開するという機能の強化を進めています。これにより透明性がさらに高まり、一般市民が化学物質に関する情報へアクセスしやすくなります。
検索例
ステップ1: ECHA CHEM公式サイトにアクセス
※「I have read and I accept the legal notice.」にチェックを入れてください
ステップ2: 検索欄に化学物質のCAS番号、EC番号、英語名称またはIndex番号を入力し、「Search」をクリックします。
ステップ3: 検索結果(あいまい検索)で、対象物質の英語名をクリックします。下図のように「Formaldehyde」をクリックすると、ホルムアルデヒドのGHS分類が確認できます。
ステップ4: 物質の詳細画面にて、左側のナビゲーションバーから「Classification & labelling」をクリックすると、以下の2つのサブカテゴリが表示されます:
① EU統一分類「CLP Annex VI-Harmonised」
② 業界による自主分類「Industry self-classifications」
ステップ5: 左側の「CLP Annex VI-Harmonised」をクリックすると、該当物質のEU統一分類が確認できます。物質の状態・形態によって調和分類が異なる場合には、該当する物質バリアントごとに個別表示されます。
※この画面では、現在適用されている統一分類と有効期限、将来的に適用する予定の分類と実施時期も確認できます
ステップ6: 「Industry self-classification」をクリックすると、業界が登録した自社分類が表示されます。分類情報の出所や最新の更新日も確認でき、情報の信頼性と有効性を判断する際に役立ちます。下図では、43種の企業による自主分類のうち、APT22による分類が最も推奨されるとシステムが判断しています。
重要なポイント①
多数の業界による自主分類の優先順位は、REACH共同提出 > REACH共同提出(オプトアウト)> REACH個別提出 > CLP通知 です。
重要なポイント②
同一物質に対して複数のGHS分類が提出されている場合、ECHAはアルゴリズムによって最も有用な分類を優先表示し、★マークで示します。このアルゴリズムの拡充と改善は現在も進行中です。
以上はECHA CHEMプラットフォームでの分類検索事例となります。今後もECHAは、同プラットフォームの各種機能を継続的に改善し、将来的には他のデータプラットフォームとのAPI連携も予定しています。
なお、元のC&L Inventory検索プラットフォームも今後引き続き更新されますが、新たな危険有害性区分(例:内分泌かく乱物質(ED)、PBT/vPvB、PMT/vPvM)に関する情報は含まれていません。
企業への重要なアドバイス
GHS分類検索プラットフォーム(ECHA CHEM)は、ECHAが構築した新型の化学物質統合データ表示プラットフォームです。
企業がEU版SDSやラベルを作成する際、同プラットフォームで情報の検索・確認が可能であり、CLP ATPの分類更新の動向にも注意を払い、製品の危険有害情報を適時に更新することで、サプライチェーン全体での危険有害性情報の伝達をより効果的に行うことができます。また、労働者の安全防護対策の策定にも役立ちます。