最も有害な化学物質の「必須用途」について
2024年04月22日、欧州委員会は最も有害な化学物質の「必須用途」に関する基準と原則の採択を公表しました。化学物質戦略の持続可能性における重要な成果物であると考えられており、EUにおけるグリーンおよびデジタルトランスフォーメーション、健康、防衛に不可欠な製品の製造に関して、産業界および投資家に将来の見通しを提供するものとなっています。
背景
発がん性、生殖細胞変異原性 、生殖/発達毒性などの性質を有する最も有毒な化学物質が、現在および将来世代に悪影響を与えないためにも、使用に際しては安全かつ持続可能であることが重要であると考えられてきました。
もっとも有害な物質の適切な使用を支援するために、さまざまな革新と投資行動が行われています。安全で持続可能な化学物質の使用やクリーンな生産プロセスの促進を目的とした190の研究・革新プロジェクトに対して、10億ユーロ以上が充てられています。
また、2023年に発表された「化学物質産業の転換経路」では、化学物質産業におけるグリーンおよびデジタルトランスフォーメーションを実現させるための行動と条件が提案されています。
概要
■ 必須用途の定義
必要用途とは、社会的な観点から最も有害な物質の用途が健康や安全にとって必要であり、なおかつ社会の機能にとって重要であり、受け入れ可能な代替物質がないケースを指します。その状況において、最も有害な物質は一定期間使用し続けることが可能になります。
■ 通達の目的
当局、投資家、産業界による最も有害な物質の非必須用途の段階的廃止を迅速に行う一方で、社会にとって不可欠な用途の段階的廃止には十分な時間の確保を目指します。あわせて、最も有害な物質の取り扱いに関する将来の見通しを、産業界および投資家に対して提供するものです。産業界が革新的で持続可能な化学物質への投資に舵を切り、優先順位をつけるのにも役立つと推測されています。
また、グリーンおよびデジタルトランスフォーメーションだけでなく、安全保障や防衛といった重要な用途で使用される物質が、代替物質が利用可能になるまで使用を継続できるという確信を企業に与える意図も含まれています。
なお、持続可能な金融・研究・技術革新などにインセンティブを与え、持続可能で安全性の高い製品や手法への移行を促進・促進できるとも考えられています。
■ 安全で持続可能な化学物質への移行
安全で持続可能な化学物質への移行支援を目的として欧州環境機関(EEA)と欧州化学物質庁(ECHA)が発表した化学物質汚染の要因と影響を評価するための指標フレームワークでは、移行の進捗については分野によって相違があると報告されています。
また、有害物質が人の健康や環境に与える影響を低減するためには、さらなる取り組みが必要であると提言されています。
参考情報
欧州委員会、最も有害な化学物質を必須用途に限定する原則を定める
欧州委員会通達 – 化学物質を扱うEU法における必須用途概念の指針となる基準と原則
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