2023年11月16日に開催された「第15回世界化学品規制サミット(CRAC2023)」の講演で、中国生態環境部(MEE)固体廃棄物及び化学品局の于婷婷氏と生態環境部固体廃棄物と化学品管理技術センター(MEE-SCC)の馬燕氏は、新汚染物管理及び既存・新規化学物質のライフサイクル全体を通じた包括的な環境リスク管理の実施に焦点を当て、中国の化学物質環境管理戦略を解読しました。
既存化学物質の環境管理
中国は、化学物質の環境リスク評価の技術システムを改善するために多大な努力を払ってきました。この評価プロセスを導くため、次に掲げるガイドライン及び基準が制定されました。
化学物質環境及び健康暴露評価技術導則(試行);
化学物質環境及び健康リスク判定技術導則(試行);
中国は、長年にわたり優先制御化学品名録の第一組と第二組、重点管理対象新汚染物リスト、中国で厳しく制限される有毒化学品名録などを含む化学物質リストに基づいて既存化学物質環境管理を行ってきました。また、ストックホルム条約で決定された要求事項も厳格に遵守しながら、2009年以降に5回の公告により同条約の規制対象となる23の物質の使用を段階的に廃止しました。
2022年、中国国務院弁公庁は「新汚染物管理行動方案」(以下、「行動方案」という)を公表しました。これは、化学物質のライフサイクル全体を通じた包括的な環境リスク管理に注目する画期的な文書であると于氏が強調しました。有毒有害化学物質の生産・使用は、新汚染物の主な発生源です。現在のところ、国際的に懸念される新汚染物には、残留性有機汚染物質、内分泌かく乱物質、抗生物質などが含まれています。そして、新汚染物であると特定される場合は増加すると予想されます。今後数年間で、中国は行動計画に従って新汚染物の管理を強化していく予定です。
新規化学物質の環境管理
新規化学物質環境管理登録制度は、行動計画における発生源管理のために重要な対策となります。2003年以降、中国は新規化学物質登録制度を実施しています。また、2021年1月1日に「新化学物質環境管理登記弁法(MEE 12号令)」が発効し、現在の登録制度が確立しました。
MEE 12号令の実施について、SCC-MEEの馬氏は新規化学物質に関する誤解を解き、新しく開発される物質に限られるものではなく、「中国現有化学物質名録(IECSC)」未収載の物質を新規化学物質と見なされることを強調しました。IECSCは、2013年版が公布されて以来、何回もの増補を経て、現時点で約47,000物質を収録しています。そのうち130以上の物質は、IECSCに明記された許可用途以外のその他の工業用途に転用する場合、新規化学物質として環境管理の対象となり、新用途環境管理登記を申請する必要があります。
馬氏はまた、新規化学物質の登録に関するデータも提供しました。統計により、上海市・江蘇省・広東省・浙江省等にある国内企業による申請件数は、およそ70%を占めました。そして、年間1トン未満の新規化学物質の場合は申請合計件数の90%以上、年間10トンを超える新規化学物質の場合は申請合計件数の5%未満です。MEE 12号令に基づいて登録された新規化学物質のほとんどは輸入活動のためのものですが、元環保部の7号令の場合と比較すると、生産活動は大幅に増加しました。2022年、登録済みの物質のうち、約50%は特定された危険有害性がないと確認された一方、その他の物質は難分解性、毒性、又はその両方を有するものに分類されました。
最後に、馬氏は企業に対し、自社の物質が登録の対象となる新規化学物質であるかどうかを確認するよう呼びかけるとともに、試験データ・環境リスク評価報告書・ドシエ作成時の質を向上させる必要性を強調しました。
次のステップ
于氏は、中国における化学物質管理に向けた今後の取組みを次のようにまとめました。
有毒有害化学物質の環境リスク管理に関する法規制の推進;
「新汚染物管理行動方案」の実施;
新規化学物質の登録制度の全面的な実施;
化学物質の環境リスク評価・管理を目指し技術支援の強化;
リスクの高い有毒有害化学物質の排除・代替によりグリーンで持続可能な化学の発展の促進など。