EPA、特定のPFASを有害成分リストに加え、資源保全回復法(RCRA)に基づく規則を改正する提案
2024年02月08日、環境保護局(EPA)は、9種類の特定パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)とその関連物質を有害成分リストに追加することで、資源保全回復法(RCRA)に基づく規制を改正することを提案しました。9種類のPFASとは、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、ヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸(HFPO-DAまたはGenX)、ペルフルオロノナン酸(PFNA)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、ペルフルオロデカン酸(PFDA)、ペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)、およびペルフルオロブタン酸(PFBA)です。PFASを取り扱う施設、例えば、石油・石炭製品製造業、化学製品製造業、廃棄物処理およびリサイクルサービス業などに影響が及びます。この提案に関する一般からの意見は2024年04月08日までに行われます。
PFASとは
パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(per- and polyfluoroalkyl substances、PFAS、ピーファス)とは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称で、水と油の両方をはじく効果があり、熱にも強いことから、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーテイング剤として、様々な製品に使われています。例えば、フライパンや防水服、自動車など身近なものに使われています。しかし、このような性質から、分解されずに自然界に残り続けるため、河川や地下水などの環境汚染を引き起こし、いったん人間を含む生物の体内に入ると排出されにくく、がんや成長障害などを誘導するとして規制強化が進んでいます。
RCRA有害成分リストとは
1976年に制定された資源保全回復法(Resource Conservation and Recovery Act、RCRA)は、米国において固形廃棄物(Solid Waste、ただし物理的に液体、半固体、気体も含む)に含まれる「有害廃棄物」と「非有害廃棄物」の処分を規定する最も包括的な廃棄物関連法です(連邦規則集:42U.S.C 82章6901-6992k)。この法の下で、環境保護局(Environmental Protection Agency、EPA)は実施基準を定め、以下のように州と共同でRCRA法を施行しています。
「有害廃棄物」に関して(42 U.S.C.「公衆衛生(Public health)」6921-6939g条):「有害廃棄物」とは、EPAが定めた有害廃棄物の特性基準に当てはまる廃棄物を言い、EPAが処理・貯蔵・処分の基準、分別ガイドライン、貯蔵・処分施設の運営者に対する記録・報告要件や技術基準などの実施規則を定め、施行しています。
「非有害廃棄物」に関して(42 U.S.C.「公衆衛生(Public health)」6941-6949a条):「非有害廃棄物」とは、「有害廃棄物」でない、いわゆる家庭から発生するいわゆる都市ごみや肥料として地中に戻される農業廃棄物などを言い、EPAは最小限の連邦基準を定め、各州がそれぞれ施行しています。
RCRA有害成分(hazardous constituents)リストとは、連邦規則集の42 U.S.C.の「有害廃棄物」の章が適用している、EPAが有害とした成分をリスト化したもので、EPAが施行している連邦規則集40U.S.C「環境保護(Protection of Environment)」261条の付表VIIIのことを言います。
RCRA有害成分リストへの追加が提案された9種類のPFASの内容
以下の9種類のPFASは、EPAによって行われた毒性および疫学研究などの科学的研究により、ヒトなどに対して毒性、発がん性、変異原性、または催奇形性を有することが示されていました。そのため、EPAはこれらとその塩および構造異性体を、RCRA有害成分リストに登録する提案を行っています。
1.パーフルオロオクタン酸(Perfluorooctanoic acid、PFOA)。フッ素ポリマーを製造するための加工助剤、洗浄剤、ワックス、水性フィルム形成フォーム(aqueous film-forming foam AFFF)などに含まれています。
2.パーフルオロオクタンスルホン酸(Perfluorooctanesulfonic acid、PFOS)。AFFF、耐油・耐水性を付与するための繊維製品の表面処理、金属メッキ、その他の用途や産業で使用されています。
3.パーフルオロブタンスルホン酸(Perfluorobutanesulfonic acid、PFBS)。PFOSの代替品として使用され、塗料や洗浄剤、金属メッキ、AFFF、耐油・耐水性の付与、その他の用途や産業で使用されています。
4.ヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸(Hexafluoropropylene oxide-dimer acid、HFPO-DAまたはGenX)。GenXは、PFOAを使用せずにフルオロポリマーを製造するGenX加工助剤技術に関連する化学物質です。
5.パーフルオロノナン酸(Perfluorononanoic acid、PFNA)。フルオロポリマーを製造するための加工助剤として使用され、金属メッキ、洗浄剤、ワックス、AFFF、エネルギー材料、その他の製品に含まれています。
6.パーフルオロヘキサンスルホン酸(Perfluorohexanesulfonic acid、PFHxS)。AFFF、耐油・耐水性を付与するための繊維製品の表面処理、メッキ液、その他の用途や産業で使用されています。
7.パーフルオロデカン酸(Perfluorodecanoic acid、PFDA)。フルオロポリマーを製造するための加工助剤として使用され、金属メッキ液、洗浄剤、ワックス、AFFFなどに含まれています。
8.パーフルオロヘキサン酸(Perfluorohexanoic acid、PFHxA)。金属メッキ液、洗浄剤、ワックス、AFFFなどに使用されています。
9.パーフルオロブタン酸(Perfluorobutanoic acid、PFBA)。メッキ液、洗浄剤、ワックス、AFFF、エネルギー材料などに使用されています。
PFASRCRA有害成分リストへの新たなPFASの追加による影響
今回、EPAは連邦規則集40U.S.C261条の付表VIIIに、以上の9種類のPFASを有害成分として追加記載することを提案しています。この規則案が採用された場合、それを適用するRCRAに基づく規制の内容が変更することになり、有害廃棄物の処理、貯蔵、および処分施設やその工程を対象とした検査や調査に影響が及びます。
この規則案に対する意見は2024年04月08日まで募集されます。
参考情報
新たに9種PFASがRCRA有害成分リストに収載される規則案
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