EPAは人間への曝露や環境への放出を考慮して新規PFASを判断する
2023年6月29日、米国環境保護庁(EPA)は、パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の新規物質および新規用途に対処するための枠組みを発表しました。この枠組みでは、新規PFASが商業目的で合成・取引される前に、このEPAが人間の健康と環境に害を及ぼさないことを確認する方法の概要を示しています。この枠組みは、EPAのPFAS戦略的ロードマップの一部を構成しています。
ここでは「背景」「内容」について記事になっています。
背景
パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(per- and polyfluoroalkyl substances、PFAS、ピーファス)とは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称で、水と油の両方をはじく効果があり、熱にも強いことから、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーテイング剤として、様々な製品に使われています。例えば、フライパンや防水服、自動車など身近なものに使われています。
しかし、このような性質から、分解されずに自然界に残り続けるため、河川や地下水などの環境汚染を引き起こし、いったん人間を含む生物の体内に入ると排出されにくく、がんや成長障害などを誘導するとして規制強化が進んでいます。
これらの要因から、環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)の化学物質安全汚染防止局は、「PFASは何十年もの間、人々の健康を保護するために必要な対策が講じられずに環境に放出されてきた」という認識をしめし、「新規で合成されたPFASが市場に参入する前に、広範囲に詳細に評価され、人々の健康や環境にリスクをもたらさないことを保証する」枠組みの必要性を認識しています。
そして、例えば、EPAは、有害物質管理法(Toxic Substances Control Act、TSCA)に基づき、新規PFASおよび既存のPFASの新規用途について90日以内に調査・検討し、この化学物質が人間の健康と環境へどのように影響する可能性があるのかを判断しています。また、リスクが特定された場合には、EPAはこの化学物質が商取引に入る前にそれらのリスクを軽減するための措置を講じています。
ただし、新規PFASの場合、それらがもたらすリスクを定量化し、その規制方法の決定を下すための情報が不十分なことが多いため、EPAの評価は難航し、一定の枠組みの必要性が考えられていました。
また、多くのPFASは、環境や人々に残留(生物蓄積)することが知られており、化学物質を直接製造、処理、流通、使用、廃棄する人々だけでなく、蓄積したPFASにさらされる地域社会への影響も考えられるため、難分解性、生物蓄積と毒性(bioaccumulative and toxic、PBT)についても、定性的に評価するための枠組みが必要でした。
内容
今回の新たな枠組みの特徴は以下の2点にあります。
この枠組みでは、半導体やその他の電子部品の製造で一般的に行われているPFASの使い方のように、暴露からの保護を備えた閉鎖系で使われ、ごくわずかな曝露および環境放出しか考えられない使用方法には適用されません。EPAは曝露がないことを保証できる場合、通常物理化学的特性データなどの基本情報を受け取った後すぐに商業取引のための合成が許可されます。ただし、初期に提供される情報に懸念がある場合、EPAは例えば、毒性の動態検査など追加の試験やリスク軽減を求める場合があります。
一方、曝露および環境放出が起こることが予想され、さらにその化学物質の使用の必要性がないとEPAが判断した場合、その物質が商業取引に入ることは許可されません。例えば、スプレー塗布されたステインガード(浸透型含浸コート剤)などでのPFASの使用方法は、明らかに環境への放出が伴うため、EPAは調査・検討の過程を進める前に、追加の試験やリスク軽減を求め、場合によっては化学物質の製造を停止する可能性もあります。
以上の2点を行うことで、環境放出につながる可能性のある用途とそうでない用途を区別した後で、新規PFASの事前試験を求めることにより、生物蓄積と毒性をもつ新規PFASが人間の健康と環境に害を及ぼさないことをEPAが保証できることになります。同時に、PFASの使用が重要な半導体などの業界にとっては、環境への曝露の可能性を低めることを証明できれば、毒性が強い特定のPFASを使用することができるようになります。
EPAは、今回の新しい枠組みの下で新規PFASの物理的そして化学的特性についての情報以外に、人間への曝露または環境への放出が考えられるPFASの毒性および蓄積情報を得ることにより、国家的PFAS試験戦略の下でPFASに関する正しい理解が広がと共にEPAの施行が助けられる、と考えています。今後、この枠組みは、EPAが現在調査・検討している新規PFASまたは新規用途の通知に適用されます。
EPAはこの枠組みに関する公開ウェビナーを今夏に公開する予定で、近日中に日時と登録情報を発表します。
この新しい枠組みは、バイデン・ハリス政権のPFASへの対処に対するコミットメント(約束)として示されたPFAS戦略的ロードマップの一部です。
参考
EPA、安全でない可能性がある新規PFASの市場参入を防止するための新たな枠組みを発表
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-announces-new-framework-prevent-unsafe-new-pfas-entering-market
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