米国|EPA、塩化メチレンの使用禁止を提案
2023-06-19

消費者用途と多くの産業および商業用途での塩化メチレン使用の禁止を提案

2023年4月20日、米国環境保護庁(EPA)は、有害物質管理法(TSCA)に基づいた措置として、曝露されることで健康が脅かされる化学物質として知られる塩化メチレンの多くの場面での使用を、禁止することを提案しました。また、これに関して、発表後60日以内に一般からの意見を募集しました。ここでは、「塩化メチレンとは」「規則案の内容」について記事になっています。

塩化メチレンとは:

塩化メチレンは、塗料やコーティング用のエアゾール脱脂剤やブラシクリーナーなどの消費者用途、接着剤やシーラントなどの商業用途、化学薬品を製造するための産業用途など、さまざまな方法で使用されています。産業用途としては、塩化メチレンは、地球温暖化への影響が大きい物質を代替品に変化させるために開発・使用されたハイドロフルオロカーボン(HFC)32の製造において、中間化学物質として使用されています。

1980年以来、少なくとも85人が塩化メチレンへの急性曝露で死亡しています。そのほとんどが住宅改修の作業の従事中に、場合によっては完全に訓練され用保護具を装備していた労働者でした。また、死亡に至らなくても非常に多くの曝露された人が、特定の癌など、深刻で長期的な健康被害を受けています。すでに、米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)は、は、塩化メチレンが神経毒性、肝臓への影響、塩化メチレンへの吸入および皮膚曝露によって癌など健康上の悪影響を持つと指摘し、リスクがある物質として特定しています。EPAは、直接接触する労働者や消費者だけでなく、使用の際に近くに居る別の消費者や労働者に対し、神経毒性、肝臓への影響、塩化メチレンへの吸入および皮膚曝露による癌など、人間の健康への悪影響のリスクがあると特定しています。しかし、2019年にEPAが一般消費者の塩化メチレン使用を禁止した後でも、未だ塩化メチレンの使用は広く行き渡っています。このため、塩化メチレンを使用し亡くなった人の家族などから、塩化メチレンの使用を完全に禁止する声が上がっていました。

規則案の内容:

今回EPAは、有害物質規制法(Toxic Substances Control Act、 TSCA)のもと最新の措置を発表しました。そこで、深刻な健康上のリスクや死を引き起こすことが知られている化学物質の塩化メチレンのほとんどの使用を禁止することを提案しました。この提案では、一般消費者だけでなく塩化メチレンを職場で使用する労働者への曝露も最小限に抑えるため、今後厳格な職場管理を行うことができる職場以外は、使用が禁止されます。

具体的には、EPAが今回提案するリスク管理規則では、15か月以内に消費者・商業・産業用途における塩化メチレンの製造、加工、流通が段階的に縮小されるように実施されます。EPAの分析では、ほとんどの用途の塩化メチレン製品は同様のコストと有効性を持つ代替製品が入手可能であることが示されています。

また、EPAが禁止することを提案していない工業製造、工業処理などの用途については、労働者を保護するために、厳格な曝露制限が課された職場化学物質保護プログラムが提案されています。この提案された要件により、地球温暖化を削減する取り組みにおいて重要な化学物質については引き続き塩化メチレンを使用して製造することとなります。今後、塩化メチレンの職場化学物質安全プログラムについて、EPAは労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Administration、OSHA)と協議し、雇用主はこのリスク管理規則が最終決定されてから1年間、労働者の化学物質保護計画を遵守する必要があり、労働者が基準値以上の塩化メチレンに曝露されていないことを確認するために、職場を定期的に監視する必要があることが確認されています。

米国航空宇宙局、国防総省、および連邦航空局についても同様に、塩化メチレンの特定の使用は、使用環境において厳格な職場管理が行われると考え、塩化メチレンの使用を最小限に抑えながら継続して使用できることも提案しています。

EPAは、特に提案されたこの要件の実現可能性と有効性に関する意見に関心があり、数週間以内に雇用主と労働者を対象とした公開ウェビナーを主催します。このウェビナーの日時と登録情報はまもなく発表される予定です。

参考

■ EPA、塩化メチレンの使用禁止を提案


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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