EU|欧州委員会、六価クロムに関するREACH制限提案の作成要請
2023-12-11

制限提案文書は2024年10月04日までに提出予定

2023年10月11日、欧州化学品庁(ECHA)は、化学物質の登録、評価、認可、制限および情報伝達など、各種規制を設ける化学物質分野の基本法令の一つであるREACH規則のもと、高懸念物質(SVHC)として附属書14の認可物質リストに収載されている六価クロムに関して、附属書17の制限リストに収載するための提案一式文書作成を欧州委員会より要請されたことを報じました。

概要・背景

■ REACH規則の附属書17の制限リストでは、対象物質と制限条件が列挙され、各エントリー毎に対象物質について制限条件が課されている。

■ 今回、要請の対象となっているのは、認可物質リストのエントリー16および17にある六価クロム物質。

■ 制限提案の対象となる物質の主な用途の1つは電気めっきで、材料をコーティングする一般的な表面仕上げ工程に用いられる。

■ ECHAは、この要請を受けて、提案は2024年10月04日までに提出する予定。

■ 目的には、制限提案が、ECHAと欧州委員会の双方にとって、現在および将来起こりうる作業量がもたらす課題に対処することが挙げられており、作業負荷とは、すでに提出された、あるいは数百社から提出される可能性のある、これらの物質の使用認可申請の多さに起因しているという。

■ ECHAにとって、申請を評価して意見をまとめることは、リスク評価委員会(RAC)と社会経済分析委員会(SEAC)の利用可能なリソースを超え、他の有害化学物質の規制業務にも影響を及ぼすと指摘されている。

■ 制限案の作成中に、他の六価クロム物質への遺憾な代替の潜在的リスクを特定した場合、追加の物質を対象とする検討も可能だが、欧州委員会と協議し、合意する必要がある。

■ 六価クロムの認可リストへの収載は、2013年04月と2014年08月に、計11種追加されている。発がん性、変異原性、生殖毒性、皮膚および呼吸感作性などの有害性が特定されている。

■ これにより作成される制限提案に基づき、制限が採択されることになれば、対象物質は認可物質リストから削除されることになる。もしそうなれば、REACH規則の中で初めての例になる見込みであるという。

■ 欧州委員会は、影響を受ける企業の状況を明確にするQ&A文書を発表し、多くの三酸化クロムの川下ユーザーを対象とするコンソーシアムの認可を取り消した欧州司法裁判所の判決(Chemservice判決)に関する主な質問もカバーしている。

■ 六価クロム化合物を取り扱っている企業は、このQ&A資料を参照するよう推奨されている。

参考情報

■ Q&A/ECHA

REACH規則の制限とは?

REACH規則の規制の中で最も厳しい規制内容がこの「制限」に係わる内容である。物質の製造、使用または上市から生じるヒト健康または環境に対する許容できないリスクがあり、様々な用途へのリスク評価と社会経済便益の評価に基づいて、EU全体で対処する必要があると判断された物質を規制する制度となっている。この制限対象物質はREACH規則の附属書17に収載され、別途欧州化学品庁(ECHA)がウェブサイト上でも管理している。

制限対象物質の更新

新たに制限対象物質が追加されたり、更新されたりする際には、後の規制化プロセスで見るように、改正規則として欧州官報で公布される。特定され、リストに明記される情報には各物質または物質群ごとに、対象となる物質(群)の範囲詳細と制限条件が含まれる。制限条件は、一般的な規制条件のほか、必要に応じて特定用途または特定状況下での規制条件、猶予期間を設ける項目、適用除外項目、その制限の項目に関係する定義などの情報が含まれる。

対象となる物質(群)の詳細制限条件

(No.) (対象)

EC No.~

CAS No.~

(主となる制限条件)

(特定用途または特定状況下での規制条件)

(猶予期間を設ける項目)

(適用除外項目)

(その制限の項目に関係する定義)

制限対象物質リストのコンプライアンス対応

制限条件の遵守

附属書XVIIに収載されている物質については、同箇所に記載されている制限条件を遵守しなければならない(第67条)。注意が必要なのは、それが物質単体か、混合物か、それとも成形品も対象なのかはそれぞれの条件で異なるため、一つ一つ個別に確認しなければならないことである。加えて、その制限の対象となる行為も、製造なのか、使用なのか、上市なのか、あるいは情報伝達やラベル表示、訓練・教育が必要なのか、などこれも個別に異なっているため、やはりその物質(群)ごとに個別に制限条件を確認しなければならない。個別の制限条件ごとに、細かく遵守期限が決められていることが多い点にも注意しておきたい。

安全データシート(SDS)の更新と提供

制限が課された場合には、その物質およびその物質を含む混合物の受領者(過去12ヶ月以内)に、更新したSDSを遅滞なく、無償で提供しなければならない(第31条)。

SDSが必要とされない物質・混合物の受領者への情報伝達

SDSが必要とされない物質および混合物の受領者に対しても、制限内容が追加・更新された後、制限の詳細情報を遅滞なく、無償で提供しなければならない。(第32条)。


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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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