2021年12月6日、「第13回グローバル化学品法規制年次サミット及びヘルシンキ化学品フォーラム・アジア会議(CRAC-HCF 2021)」の2期目がオンラインでスタートしました。今回は、まず中国化学品安全協会(CCSA)の事務総長である路念明氏は、「なぜ安全生産法の改正が必要なのか?生産経営事業者の責任を如何に強化すべきか?」を題して、講演で解読と分析を行いました。
2021年6月10日、全国人民代表大会常務委員会は、「安全生産法(改正)」(以下、「改正法」という)を公布し、2021年9月1日から施行することになりました。中国の安全生産管理において、「安全生産法」の動向は前から注目されています。2002年施行以来、既に2009年と2014年にそれぞれ一部の条文が修正され、今は3度目となっています。
路氏によれば、この前の改正は重大事故の発生の抑制につながり、今回も例外ではないと指摘しました。2019年3月21日、江蘇省響水県の天嘉宜化学工業の爆発音に伴い、78人の命を落とした「3・21」重大事故が発生しました。当時の調査では、法規制の適切な実施及び関連部門による監督管理の不十分や違反行為に対する処罰の軽すぎ等の重要な問題点が発見されました。
そのため、今回の改正は「3・21」重大事故をはじめ甚大な被害を伴う事故の発生原因を踏まえ、2014年版の約49%(56条目)を修正し、5条目を新たに追加しました。これをうけ、現在は119条目に至りました。そのうち、路氏の話によりますと、以下の主な変化点が目立ちます。
1.生産経営事業者の主体的な責任を明確化
改正法では、全員安全生産責任制度の整備を通して、主要な責任者を第一責任者とし、その他の責任者も職責の範囲内で安全生産業務に責任を全面的に負うことが言及されています。一方、各部門・各係の責任者・従業員もそれぞれ安全な生産に責任を持つよう安全管理体制の強化を求めることで、「安全管理の関連部門及び人員だけが安全生産に責任を負うべきである」という誤解を解くことを図っています。
また、プラットフォーム経済等の新興産業又は領域については、当該産業、領域の特徴に基づく全員安全生産責任制度を構築するという規定も追加されました。
2.関連業者の違法行為を厳罰化
今回の改正では、第6章において罰則が大幅に見直されています。そういう中、罰金の見直しは多くの条文で行われています。例えば、改正を拒否した場合は、改正を命じられた翌日から当初の罰金額に応じて日割に継続的に罰せられることができます。そして、旧法では、最高2,000万元の罰金が課せられることが定められましたが、本改正法では最高1億元に引き上げることが可能です。
それに加え、違法行為がある生産経営事業者の場合は、関連部門が法によりその生産・経営を一時停止し、相応の資格取得証書を取り消す一方、主要な責任者の場合は、刑罰または職務停止の処分を受ける他、当該業界における生産経営事業者の主要な責任者になることが一定期限内または終生禁止されるかもしれません。
3.二重予防メカニズムを整備
2016年に国務院安全生産委員会弁公室が唱えた「二重予防メカニズム」が、本改正法に導入されました。具体的には、安全リスク分級管理体系及び潜在的なリスクの調査と処理の二重予防体系を構築し、安全生産水準の向上及び安全生産の確保を目指しています。
4.行政法執行と刑事司法の連動体制を健全化
本改正法では、2020年に改正された「刑法修正案(十一)」第134条をもとに「生産経営事業者は、生産安全に直接関連する監視、通報、防護、救助用の設備・施設を破壊し、あるいは関連データ及び情報を改ざん、隠蔽、廃棄してはならない」という規定が新たに追加されました。それに違反した場合は、1年以下の懲役等が課せられることになります。