米国|労働安全衛生局(OSHA)、危険有害情報伝達基準(HCS)の改正
2024-07-24

OSHA、HSCを国連GHSの第7版へ適合させて他国の規制との整合性を高める改正

2024年05月20日、労働安全衛生局(OSHA)は、危険有害性周知基準(HCS)を、国連の「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」の改訂第7版(Rev.7)に適合させ、さらに2012年更新内容の実施中に生じた問題に対処した内容を加えて改正しました。

今回、OSHAはHCSの見直し時期になったためこの最終規則の改訂を行いました。修正点として、特定の健康および物理的危険有害性の分類基準の改訂、ラベルの更新に関する規定の改訂、小型容器に関する新たなラベル規定、企業秘密に関する新たな規定、安全データシート(SDS)の内容に関する技術的修正、およびこの基準で使用される用語の定義に関する改訂が含まれています。この最終規則は、2024年07月19日に発効します。

労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Administration、OSHA)とは

労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Administration、OSHA)は、米国労働省の下部組織で、米国保健福祉省とは別の省庁に属しています。労働者の安全と健康を守るための規則や基準を策定・施行し、また労働者に支援活動、教育、援助などを提供して安全な職場の確保に努めています。日本での厚生労働省労働基準局や都道府県の労働局労働基準部、さらに労働基準監督署に相当する組織です。

50州および連邦当局下にある特定の地域および管轄区域の一部の公共部門の雇用主および労働者に加えて、ほとんどの民間部門の雇用主とその労働者が労働安全衛生法の下で、OSHA対象となっています。OSHAは、事業者や労働者を支援し、職場での傷害、疾病、死亡者数の削減を目指して「労働者の危険行動の削減、安全衛生管理システムの導入、既存のプログラムの改善を事業者や労働者に奨励」や「労働安全衛生の義務基準を作成・施行し、事業所の監督や事業者への支援、通告、罰則の制定」などのことを行っています。

危険有害性周知基準(HCS)の改定の背景

「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Nations’ Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals、GHS)」は、他の政府機関や国際的な貿易相手との整合性を高める目的で、世界各国で取り入れられて実施されています。米国ではOSHAが前回2012年に危険有害性周知基準(Hazard Communication Standard、HCS)をGHSの改訂第3版に合わせて改訂していました。GHSは2年ごとに、改善や内容の明確化を行うたびに更新されています。

そのため、OSHAは前回の2012年の規則制定以降に発生した問題に対処し、他国の規制との整合性を高めて、基準の有効性を高めるための改正を求められていました。

危険有害性周知基準(HCS)の改定の内容

OSHAは、1970年労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act、OSH法)に基づき、HCSを公布して、危険化学物質への曝露に関連する職場と労働者の安全性を規定しています。HCSでは、化学物質の製造業者または輸入業者に対し、製造または輸入する化学物質の危険有害性を分類することを義務付けています。

また、すべての雇用主に対し、ハザード・コミュニケーション・プログラム(危険有害物質の情報を伝達する基準を制定)に従い、被雇用者へのラベルやその他の警告書、安全データシート(safety data sheets 、SDS)の提供および訓練を行うことを義務付けています。

今回の最終規則では、HCSの基本構造は変更していません。ただし、以下のような目的で、注目すべき変更が含まれています。

  • GHSとの整合性を維持する

    • エアゾール、減感爆薬、可燃性ガスの分類カテゴリーを追加しました。

    • より明確で正確な危険有害性情報を提供するため、一部の危険有害性情報および予防措置の内容を更新しました。

  • 2012年HCSの実施で明らかになった問題に対処

    • 小型容器に関する表示要件を更新しました

    • バルク出荷を含む出荷のために利用する包装容器のラベリング要件を更新

    • 企業秘密に関連する理由で、物質の濃度範囲の非公開を許可

この最終規則は、2024年07月19日に発効します。

参考情報

労働安全衛生局(OSHA)、危険有害情報伝達基準(HCS)の改正


本記事の著作権は、株式会社先読に帰属します。なお、記事の相互掲載について、当社と株式会社先読との間で合意がなされています。

転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

規制に関する詳細については、お問い合わせください。
お問い合わせフォーム