化粧品原料の安全性評価は、製品全体の安全性評価の基礎です。「植物由来原料の化粧品新原料の申請方法は?登録・届出の注意事項および資料要件について」において、中国における化粧品新原料申請に必要な毒性試験資料について紹介しました。本稿では、化粧品新原料における動物試験をどのように削減するかを詳しく解説します。
動物試験の代替ニーズは、業界や消費者の動物福祉および「クルエルティフリー(残虐性ゼロ)」への関心の高まりから生じており、法規の立法にも「削減(Reduction)・最適化(Refinement)・代替(Replacement)」の重要性が重視されている。
また、安全性評価手法および毒性試験法の急速な発展も背景にあります。欧州連合、米国、カナダ、ノルウェー、オーストラリアなど、多くの国と地域が化粧品の安全性評価において動物代替試験法の使用を提唱しています。
中国における代替法の拡充
「化粧品安全技術規範」に収録された代替試験法は増加しています:
2021年第31号公告「化粧品新原料登録届出資料管理規定」(以下「規定」)では、条件付きで動物代替試験法の受け入れを認めています。
化粧品新原料に関する毒性試験項目は、「化粧品安全技術規範」に規定された試験法に従って実施する必要があります。
現在、中国における化粧品新原料の申請資料は依然として動物試験データが中心ですが、代替試験法の研究および検証体系の構築が積極的に進められており、「化粧品安全技術規範」に収録される代替試験法も増加しています。
国際的な代替法について
「規定」では、適用される動物代替試験法が中国の「化粧品安全技術規範」に収載されていない場合、当該代替試験法は国際的な権威を有する代替法検証機関により収載されている方法である必要があり、かつ、当該方法が毒性学的エンドポイントを正確に予測できる証明資料を同時に提出しなければなりません。
証明資料には、当該代替試験法の研究過程の概要および10種類以上の既知の毒性を有する試験物質の研究データ、結果分析、研究結論などが含まれています。
国際的な権威ある代替法検証機関には、主に以下の機関が含まれます:
経済協力開発機構(OECD)
化粧品規制協力国際機構(ICCR)
米国代替法検証省庁間連絡委員会(ICCVAM)
欧州連合動物実験代替法基準実験所(EURL-ECVAM)
日本動物実験代替法評価センター(JaCVAM)
韓国動物代替試験法評価センター.(KoCVAM)
カナダ保健省(Health Canada)
動物試験が免除される場合
どのような場合で化粧品の新原料は動物試験を行わずに申請を完了できますか?
化粧品の新原料に関連する毒性学試験において、皮膚光過敏反応試験については、現在の国内外では動物を使用しない代替試験法がありません。また、全身毒性に関しても、有効な代替方法が不足しているという問題があります。
3つの状況
上記の理由に基づき、化粧品の新原料申請において、「規定」で動物試験を実施せずに申請を完了する可能性があるのは、次の3つの状況のみとなっております:
状況6:ポリマー状原料。
状況5:安全な食用歴がある原料、かつ紫外線吸収特性を持たない原料。
状況3:3年間の安全使用歴がある低リスクの原料、かつ紫外線吸収特性を持たなく、なおかつ国際的な権威ある安全評価機関が化粧品への使用が安全であるという安全性評価報告、または倫理的条件下で実施されたヒト安全性試験報告があるもの。
試験法の適用性
また、すべての動物代替試験法は、試験法の適用性を考慮する必要があり、大部分の代替試験法は細胞または人工組織を用いたものであるため、原料の組成や理化学特性に一定の要件があります。方法選定時にはこの点に留意する必要があります。
統合的試験戦略
また、単一の代替試験法には限界があるため、必要な場合には統合的試験戦略(ITS)を採用して包括的に評価する必要があります。
「規定」では、化粧品の新原料の登録・届出の過程において、動物代替試験法を用いて毒性学的安全性評価を行う場合は、原料の構造的特徴および特定の毒性学的エンドポイントに応じて、適切な試験の実施と評価のための戦略的統合方式(IATA)を用いて新原料の毒性を評価すべきであると定めております。
「ゼロクルーエルティー」な製品試験戦略を推進する企業に、中国の代替試験法の最新進展や、新たな試験法の研究および構築を注目していただくことをお勧めいたします