空港におけるPFAS流失防止法
2022年12月20日、米国バイデン大統領は「有害物質もしくはPFASからの消防士の保護法」に署名しました。この法律は、米国国土安全保障省(DHS)に、消防士およびその他の緊急対応要員を、PFASが含まれる消火剤などへの曝露から保護するためのガイダンスを作成することを要求しています。2022年、現在の政権と立法府の両方は、さまざまな規制プログラムの下でPFAS化合物を用いた製品とその取扱いを規制しています。今回はこれら規制の一部に署名したことになります。ここでは「PFAS化合物」「2022年のPFAS化合物に対する動き」「署名された法の内容」について、記事になっています。
PFAS化合物:
PFASは、アルキル鎖に結合した複数のフッ素原子を持つ化合物のグループ全体を指し、PFOS、PFOA、GenXなどを含む人工化合物の大規模なグループを示します。PFASは、水や油をはじき、難燃性の性質から航空機の火災などで使われる泡消火剤にも活用され、ジェット機事故や訓練などでPFASが含まれる泡消火剤が使われてきました。2022年、日本の米軍基地周囲において泡消化剤がタンクから漏れ出たり、誤って外に大量に放出されたりした痕跡が見つかったり、基準値の数十倍にもおけるPFASが処理水などから検出されて話題になりました。米国環境保護庁 (United States Environmental Protection Agency、EPA)は、特定のレベル以上のPFAS(パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質)は「前立腺がん・精巣がんなど一部のがんのリスク上昇」「妊娠高血圧症など生殖への影響」「コレステロール値の上昇とそれに伴う肥満のリスク」「低出生体重・骨の変異など子どもの発達への影響」「ワクチン反応など免疫力の低下」に影響を及ぼすとしています。
2022年のPFAS化合物に対する動き:
米国においては、2022年11月にPFAS戦略的ロードマップを発表したEPAを筆頭とし、2022年にバイデン政権と議会がPFASに対して多くの規制プログラムを施行してきました。加えて、州ごとに独自の州法によって規制プログラムが提案・施行されている状況です。2023年もPFAS関連の規制が2022年と同じくらい活発に提案・施行されると考えられ、過去または現在これらの化合物の製造や運送に関わる事業種は、そのリスクを評価する、代替品への移行などを検討する必要があります。
EUにおいては、欧州化学機関(European Chemicals Agency、ECHA)が、2022年にすでに「泡消火剤に含まれるPFASの禁止」を提案しており、欧州委員会と27のEU加盟国がおそらく2023年に提案を承認するかどうかを決定します。
日本においては、化学物質の保管などについて規定している化学物質審査規制法に、環境庁より平成23年(2011年)3月31日付で「適用する同令第9条の表PFOS又はその塩の項第4号に規定する消火器、消火器用消火薬剤及び泡消火薬剤に関する技術上の基準を定める省令」が追加され、PFOS含有泡消火剤に対する措置はされています。しかし、PFOSの関連化合物も広く含むPFAS全体の泡消火剤やそこからの環境への排出については法律的な規制はなく、国が水道水と環境中について目標とすべき暫定の指針値(濃度)を示しているのみです。
署名された法の内容:
今回署名された「有害物質もしくはPFASからの消防士の保護法」では、国土安全保障省(Department of Homeland Security 、DHS)に対して消防士やその他の緊急対応要員を消火用泡消火剤に含まれるPFAS曝露から守る必要があるとしています。そして、PFASを含む泡消火剤などに対応するため、そしてPFASの環境への放出を防ぐため、訓練・教育プログラムやガイダンスを作成することを要求しました。
特にDHSには以下3つの義務がある事を勧告しています。
泡消火剤および個人用保護具(personal protective equipment 、PPE)からの PFAS への曝露を低減・除去する。
泡消火器、消火剤から環境へのPFASの放出を防止する。
消防士やその他の緊急対応要員に、PFAS を含まない泡と泡消火器の代替品、PPE、その他の消火用具・機器について教育する。
加えて今回署名された法では、DHSはPFASの放出や暴露を削減、制限、防止するための機材や対応方法を公開するオンライン公開リポジトリを作成する必要があるとされています。
参考
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